令和6年度事業【京温泉 湯けむりシンポジウム ~温泉地・京都の楽しみ方を学ぶ~】

「いい風呂の日」の11月26日(火)、京都市温泉観光活性化協議会では、歴史文化都市・京都のもう一つの顔、“京温泉”の魅力をより多くの人に知っていただくために、「~温泉地・京都の楽しみ方を学ぶ~ 京温泉 湯けむりシンポジウム」を上賀茂神社にて開催しました。温泉アナリストの高橋一喜氏、「嵐山温泉 彩四季の宿 花筏」女将の中西美暁氏、「空庭テラス京都・別邸」総女将の八重田かおり氏、株式会社らくたびの山村純也氏が登壇。約80名の参加者は、京都の知られざる温泉文化とその魅力に触れる、多岐にわたる話に聞き入っていました。

[トークセッション登壇者]山村 純也 氏/高橋 一喜 氏/中西 美暁 氏/八重田 かおり​ 氏

水ゆかりの世界遺産の古社で
開かれたシンポジウム

トークセッションに先駆け、まず温泉協議会の会長 岩井一路(かずみち)氏(京湯元ハトヤ瑞鳳閣 代表取締役社長)が挨拶。「神社仏閣や伝統工芸、京料理など、数々の魅力的なコンテンツがある京都。実は大温泉地でもあるのですが、そのことはまだあまり知られていないのが現状です。本日のシンポジウムでは、京都の温泉文化にスポットを当て、その素晴らしさを皆様と感じながら、温泉地・京都の楽しみ方を一緒に考える機会になればと考えております」。

トークセッションの様子

上賀茂神社の第205代宮司・髙井俊光氏からも、お言葉をいただきました。「上賀茂神社の正式名称は、賀茂別雷(かもわけいかづち)神社。雷というとちょっと怖いですけれども、この漢字を分解すると田んぼに雨が降っている。つまり水の恵み、大自然の恵みを分け与えていただく神社という意味があります。

このように非常に水に縁が深い神社で、お湯につかる「温泉」という日本独特の素晴らしい文化についてのシンポジウムを開催いただけることは有意義で、私どもも誇りに思います。京都市の温泉の、ますますのご発展をお祈りします」。

神山湧水が湧き境内に小川が流れる京都最古の神社のひとつ「上賀茂神社」。国宝2棟、重要文化財41棟を含む広大な敷地は全てユネスコ世界文化遺産に登録されています。また、2024年12月でユネスコ世界文化遺産登録30周年を迎えました。

トークセッションの様子

6種類もの泉質がそろう
豊かな京温泉

トークセッションでは、京都で観光ガイドとして長年活躍する「らくたび」の山村純也氏がファシリテーターとして、全国3900超の湯を巡っている温泉アナリストの高橋氏、嵐山の「嵐山温泉 彩四季の宿 花筏」女将の中西美暁氏、四条河原町の温泉ホテル「空庭テラス京都・別邸」総女将の八重田かおり氏という3人の温泉専門家に、京温泉の魅力の話を聞き出していきます。

トークセッションの様子

山村氏が会場に向かって「京都が温泉地だとご存じの方は?」「実際に入ったことのある方は?」と聞くと、多くの人が挙手。「温泉通の方々を前に言うことではないかもしれませんが(笑)、京都の温泉は非常に多彩な陣容です。これだけいろんな種類の温泉に入れる場所は、なかなかないですよね」と山村氏が水を向けると、温泉アナリストの高橋氏は「その通り。京都には10ある泉質のうち6種類もあります。全国的にも非常に珍しく、特に県庁所在地のような都市でこれだけの泉質がそろうのは稀です」と返し、さらに「風情ある街に温泉が点在する京都は、『日本一大きな温泉地』とも言えるのでは。昨日、約15年ぶりにくらま温泉の露天風呂に入ったのですが、紅葉も本当にきれいで。一方、街のど真ん中にも温泉があったりと非常にバラエティに富んでいるところも魅力だと思います」と、自然豊かな郊外から都市部まで点在する、京都の温泉の特性を指摘しました。

トークセッションの様子

古くから景勝地として知られる嵐山は、外国人にも人気の一大観光地。しかし、温泉旅館「嵐山温泉 彩四季の宿 花筏」を営む中西氏は、かつては今ほど観光客が多くなかったと話します。「約20年前、嵐山で観光に携わる人たちの間で『観光の起爆剤として温泉を掘ろう』という話が出て、嵐山温泉開発株式会社を皆で作ったんです。そこで掘った温泉から、今は毎日、各旅館や足湯施設にお湯を運んでいます。泉質は低張性弱アルカリ性で少しとろみがあり、とてもよく温まるお湯です。うちの『花筏』にはいくつか露天風呂があるのですが、同じお湯なのに湯舟によって肌触りが違うんですよ。嵐山観光に来られた方がお風呂に入って、お食事をして。それを目当てに何度も来てくださるお客様も増えてきました」と、嵐山温泉の誕生から現在までの軌跡を語りました。

トークセッションの様子

一方、街中の四条河原町に2年前にオープンした「空庭テラス京都・別邸」も、近年掘り当てられた温泉です。総女将・八重田氏は「日本らしいホテルを作りたいという思いから、始まりました。ただ、なかなか温泉が出なくて。1120m掘ってようやく出てホっとしました(笑)」と温泉掘削の秘話を披露。「泉質は塩化物泉で、マグネシウムの含有量は全国でもトップクラス。人間に必須の成分ですが、身体の中では生成できません。それを温泉では皮膚を通って体に取り入れられ、癒やしやアンチエイジングの効果もあるそうです。そう言うと、女性はみんな毎日入りたくなっちゃうようなお風呂です。最上階にありますので、東山と鴨川を見ながら、もう気分は最高。私も入るたび、なんて美しい街なんだろうと思っています」と、山と川が近い京の街の温泉ならではの魅力を教えてくれました。

トークセッションの様子

もっと、もっと京温泉を
楽しむためには?

様々な魅力ある温泉の話を踏まえ、山村氏がさらに京温泉の楽しみ方のコツを聞くと、高橋氏からは二つの提案が。「まず、先ほども話しましたが、京都の温泉は泉質が非常に豊かなので、泉質の違いを楽しむ湯巡りはいかがでしょう。例えば『空庭テラス』の塩化物泉は、塩分が強いお湯なので温まりやすく、“熱の湯”とも呼ばれます。塩分が肌をコーティングするので保湿効果があり、肌に良いと言われます。『花筏』はアルカリ性単純温泉で、こちらも「美肌の湯」。透明な湯のため温泉成分が少ないのではと誤解されがちですが、実は一般的な入浴剤の数倍の温泉成分があり、侮れません。他にも、いろいろな泉質(含鉄泉、放射能泉、炭酸水素塩泉など)の温泉がありますので、それを巡るのも良いのでは。それからもう一つ、市内にこれだけ近場に温泉がありますので、ふらっと一人で出かけるのにもお薦めです。日常の仕事や人間関係などでストレスを感じたとき、プチ家出する感覚で『ソロ温泉』もいいかなと」。また山村氏からは「京都一周トレイルという山歩きのコースがあります。嵐山もそのコースに入っているので、トレイルを楽しんだあとの温泉&食事もいいなと思います」というアイデアも出されました。

最後に山村氏は「訪れる目的として『温泉』が加わることによって、京都はさらに多彩な魅力を秘める国際観光都市になっていく。それを目指し、皆さんと一緒に京都の温泉地をつくっていけたらと思います。今日ご来場の方もこのあと、どんどん周りの方にこの魅力を伝えていただけたら」と呼びかけました。

トークセッションの様子

熱いトークセッションのあとは、上方落語界を代表する一人、月亭八方氏が登場。京都が誇る江戸時代の日本画家、円山応挙が描いた美人画にちなんだ落語『応挙の幽霊』を上演し、会場は笑いで大いに沸き、まさに身も心も温まる一日となりました。

トークセッションの様子

Profile

山村 純也 氏

株式会社らくたび

山村 純也 氏

立命館大学文学部在学中から観光事業に取り組む。2006年4月、株式会社らくたびを創立。以後ツアー企画、講師などで活躍。2007年3月『らくたび文庫』シリーズを創刊。おもな著書に、らくたび文庫『幕末 龍馬の京都案内』などがある。

高橋 一喜 氏

温泉アナリスト

高橋 一喜 氏

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3900超。著書に『日本一周3016湯』などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほかメディア出演多数。

中西 美暁 氏

嵐山温泉 彩四季の宿 花筏 女将

中西 美暁 氏

「嵐山温泉 彩四季の宿 花筏」は、美味しい料理と温泉が自慢の旅館。嵯峨野観光に便利な立地で、宿泊や日帰り温泉も楽しめます。展望露天風呂からは嵐山の美しい景色を一望できます。

八重田 かおり​ 氏

空庭テラス京都・別邸 総女将

八重田 かおり​ 氏

大学卒業後、サービス業界で営業職や外資系企業でのマーケティング職など様々な業種を経験し、7年前に「空庭テラス京都」等のホテルを運営するサンフロンティアホテルマネジメント株式会社に入社。2022年に「空庭テラス京都・別邸」の総女将に就任。


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